2012年11月7日水曜日

「鉄道公安官と呼ばれた男たち」  濱田研吾



                              
by Eiji.K

◇ 国鉄民営化まで存在した鉄道公安官の歴史ドキュメントのルポであるが、当然のこととして日本国有鉄道の歴史そのものと深くかかわることからJRの社史を読んでいるようで少し読みづらかった。

◇ 現在の交通移動手段の主体は自動車機関であるが、それ以前は鉄道が中心であり、鉄道の占める役割や利用頻度は非常に大きく必然的に犯罪が多発したことからそれを取り締まる鉄道公安官の役割は、身近な存在であった。子供のころは鉄道公安官と警察官は同一職業であると思っていた。

◇ 西部劇等でよく出てくる列車を襲う集団強盗が昭和23年頃に日本でもあったとは知らなかった。

◇ アメリカの圧力で鉄道公安官が拳銃を所持することが決まったが、運用で常時携帯することにならなかったのは日本人の矜持である。

◇ 鉄道公安官は国鉄マンとしてのサービス活動業務と犯罪に対する防犯業務を兼務する立場の葛藤があり苦労されたことはよくわかる。特に、労働組合の取り締まりの立場で職場の仲間から疎んじられたことは共感できる。

◇ 表題にもあるとおり鉄道公安官は男の仕事であったことが分かるが、女性の鉄道公安官もいたと思われるので、どのような役割分担であったのかの記述が欠落しているのではないか。

◇ 一昔前は“キセル”行為は日常での話題となる軽犯罪であったが、SUICA、PASUMOの出現によりできなくなっている。ITにより犯罪が撲滅できた好事例ではないか。

◇ スリについても、近郊電車の状況は以前と同様であるが、遠距離旅行は、ほとんど新幹線利用であり、セパレートされた指定席では従来のスリ行為は実施しにくいのではないか。車両構造の進展も犯罪防止に直結すると思う。