2013年4月3日水曜日

「日本の国境問題」  孫崎亨

平成2543()

   by Eiji.K

◇ 日本の国境問題=領土問題の歴史的経緯をこのように分かりやすく解説されたものを読んだのは初めてである。

◇ この種の問題は通常新聞・インターネットからの情報が全てであるが、このような歴史的経緯事実(ポツダム宣言・サンフランシスコ平和条約での領土放棄)が正確に書かれていないことについて疑問に思う。

◇ 国どうしの条約締結事項は、その国間の国力に応じた解釈がなされ、その国力の変遷に伴い変化するという歴史の事実を知り、現代においても同様に著しく変化するのだということを知らされた。(国境線は力関係の変化でずらされる。)

◇ ドイツは第2次世界大戦により分割された国土を取り戻そうとはせず、欧州連合(EU)の中で実を取るという方向に昇華してきた先見性の卓越さは素晴らしいと思う。(北アイルランド、スペインバスク地方、ユーゴ諸国、ギリシャとトルコに分割されているキプロス等の領土問題も同様の解決手法にならないのか。→東アジア共同体構想)

◇ 個別課題について
○ 北方領土問題
  ・ソ連・ロシアと日本との平和条約締結について、大国アメリカの思惑(冷戦時の日ソ間の進展阻止、特に、歯舞・色丹諸島を分割したら沖縄をアメリカに返還させるとの脅し→雪解け時に日本からのロシア支援を促したこと等)によりそのまま日本が踊らされてきたことにその当時の官僚・政治家の反省はどうなっているのか。
  ・ロシアも日本が世界第2位の経済力を持っていた時は、経済支援を得るため歯舞・色丹諸島の分割は認めたが、日本がロシアにとって第11番目の貿易国になったら、2島分割を認めないという政治の流れは冷酷である。今後の日本の国力の発展を期待できない中ではその時点での政治家の判断力が問われる。
 ○ 竹島問題
  ・アメリカは竹島の帰属について、日韓への対応に変遷があり、日米安保条約で日本への支援があるかは不明な状況である。
 ○ 尖閣諸島問題
  ・周恩来・鄧小平からの棚上げ方式に対する日本の国有化意向(特に、石原慎太郎の買い取り問題に翻弄された民主党の稚拙さ、棚上げ合意の否定、日中漁業協定による自国の漁船のみ取り締まることの暗黙の合意の破棄行動等)の不手際さ(“領有権は存在しない。”“棚上げは合意していない。”等の対応)を感じる。
  ・アメリカは日ソ間の領土問題を自分の都合のいいように利用してきたが、米中の緊張が高まる中では、尖閣諸島問題を同様の取扱にする恐れがある。
・世界の警察官を自任するアメリカの軍事力よりも中国のそれが今後、上回る予測は、将来の外交・政治問題の要の課題になるのだろうと思う。


◇ 北方領土、竹島、尖閣諸島は小さな面積の場所であり、経済的な価値はあまりない。ロシア、韓国、中国は領有権を主張しており、領有権で争うことよりもそれらの国と平和な繁栄をお互いに享受することの方が国民にとって有意義である。お互いの見解を認め合い、少なくとも棚上げによる一時回避が最も現実的な対応方法である。

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