2013年2月6日水曜日

「最後の小学校 」  秋山忠嗣


平成2526()
 by Eiji.K

◇ 教育における先生と生徒の在り方の原点のような内容である。

◇ 閉鎖される小学校の最後の一人となった“さつき”に対する教育者(夫婦)の愛情あふれる取り組みの数々と“さつき”の成長の経過を見守るドキュメンタリーであるが、作者が向島に赴任した理由は、作者が中学生の時に不登校の引きこもりを体験しており、自分の経験を踏まえた作者本人の過去の自分を見つめ直す矯正の作用があったのではないかと感じる。

◇ 子どもを教育する楽しさ、厳しさ、喜び等が一人の生徒しかいないことから純粋培養されるような環境にあり、こんな教育者になったら幸せだろうなと思わせてくれる。

◇ 精神的な疾患者が多くなっている等の教職員の厳しさが言われているが、今の教職員の皆さんに是非、読んでもらいたい内容である。

◇ “さつき”が中学校に進学し、どのようになっているのか「あとがき」等で紹介してもらいたかった。

◇ 「あとがき」で島の卒業式の場面はフィクションであるとあるが、なぜ、そのようなことになったのか疑問である。実際の卒業式のことを経験するはずなのに。

◇ 良いと思った文章表現
 ・人との会話量や交流が少ないと子どもの思考力や聞き取る力を伸ばす機会も少なくなる。
 ・(“さつき”と愛美の跳び箱の場面で表現されているが)一緒に頑張る仲間の存在があるということは、一人で繰り返し練習することよりも上達が早くなるということ。
 ・学校に行く目的は、その人が幸せになるために行くのであって、進学するとか、就職することは単なる手段にすぎないこと。
 ・子どもは大人の言うとおりになるものではなく、大人のすることをそのまままねることをする。
 ・教育の目的は学力や人間関係のスキルを身につけさせることが重要であるが、それ以上に必要なことは、将来、子どもたちがつらいことがあった時に、ふっと思い出させる安らぎや温かさの思い出を作ること、子どもが子どもらしくいられる時間を持たせること、大切にされた記憶があること等そんな心のふるさとを作ってあげることである。
 ・子どもを笑顔にするには、やっぱり一緒に過ごす先生の余裕やゆとりも必要なのではないだろうか。
以上