平成26年4月2日(水)
by Eiji.K◇ 久しぶりの長編小説で読みごたえがあった。
内容は目次にあるとおり3部構成で3人の年代記となっている。
第1部 最後の神話時代 1953年(昭和28年)~1975年(昭和50年)
■ 赤朽葉万葉
第2部 巨と虚の時代 1979年(昭和54年)~1998年(平成10年)
■ 赤朽葉毛毬
第3部 殺人者 2000年(平成12年)~未来
■ 赤朽葉瞳子
文庫版あとがきで作者は第1部は歴史小説、第2部は少女漫画、第3部は青春ミステ
リーといっているが、その通りの内容で、山陰地方の時代背景とともに旧家の変遷を描
いた大きな大河小説となっている。
◇ 赤朽葉家が”辺境の人”万葉を嫁にしたのは、とうの昔に追い出してしまった山奥に消
えた土着民(狩猟採取の縄文時代人)への負い目を感じ、また、製鉄産業という近代化
によって引き起こされた事故発生のたたり等を慎めるためという説明があるが、このよ
うな歴史認識の鋭さや時代考証が随所にあり感銘を受ける。
◇ 特に万葉と黒菱みどりが鉄砲薔薇という架空の花が咲いている亡骸の箱がたくさんあ
る山に行った場面は幻想的・神秘的でよかった。
◇ 不良少女たちが跋扈していた時代は確かに昭和の終わり頃、存在していたが、どこに消
えてしまったのだろうかと思う。毛毬の製鉄天使の行動や漫画家の話は実体験がなく、
身近に事例等が全くなかったので、感情移入ができず、理解不能であった。
◇ 瞳子の謎解きは現代の話であり読みやすかった。瞳子の悩みは祖母や母のように本家の
一時代を自ら築き、歴史に名を連ねるようなことができなく、本家の歴史の無邪気な破
壊者になってしまうという恐れを持っているが、現代の日本の時代趨勢、特に低成長経
済が今後とも長期間継続すると予測される中では、変化や刺激の少ない時代になってい
くので、旧家の後継者の共通の悩みとして同情できる。
◇ 赤朽葉タツの存在が際立っており、旧家を取り仕切る要としてこの小説を面白くしてい
る。
以上
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