2014年9月3日水曜日

「学問のすすめ」  福沢諭吉

「現代語訳 学問のすすめ」  福澤諭吉著 齋藤孝訳
                                                 
by Kumiko.O

選書した理由、日ごろ私が抱いていた疑問に、この本がどのように答えてくれるか?疑問とは
学問は何のためにするのか?
生きている中で、迷いや岐路に立ったとき、学問は示唆をあたえてくれるのか?
学ぶことで、幸せになれるのか?

• 本書の「学問とは」普通の生活で役立つ実学である。本を読むだけで学問ということはできない。 ①   学問の定義

• 学問をすることで自分の意識がはっきりし、経済がうまくまわり、幸せな生き方ができる。③

• 勇気と言うものは、ただ読書をして得られるものではない。読書は学問の技術であって、学問物事をなすための技術に過ぎない。実地で事に当たる経験を持たなければ、勇気は決してうまれない。②

• 品格をたかめよ。知識だけでは品格は高まらない。ではどうするか。その要点は、物事のようすを比較すること。これは、個々のあれこれを比較するということではない。こちらの全体と、あちらの全体を比べて、それぞれのいいところと悪いところをあまさず見なくてはいけない。①

• 信じる、疑うということにおいては、取捨選択のための判断力が必要なのだ。学問というのは、この判断力を確立するためにあるのではないだろうか。②

• 世の中を良くしていくことと、自分自身が充実するということ。「国」や「公」と「個」や「私」が常に矛盾なくつながっている。福沢スタイル③

• 人生を活発に生きる気力は、物事に接していないと生まれにくい。物事の相談では、伝言や手紙ではうまくいかなかったことでも、実際にあって話をしてみると上手く治まることがある。③

【感想】
私は、学問を個人的な「内なるものの充実・醸成」と捉えていたが、福澤の学問は「社会」で 生きていくためのものという広い捉え方をしていた。

ばさばさと物事を切っていく文章は、非常に小気味がよかった。私は自分に自信がないた  め、「・・・か」というふうに常に断定を避けてきた。

判断力の基準は、常日頃から磨いていかないと身につかないと思った。遅いけれど。

福沢諭吉の魅力「一言で人柄を表すと、ざっくりしている。こまごまとした前置きや注釈はな く、物事の本質をつかみ一番大事なところだけを取り出して見せてくれる人」。前置きや注釈が長いのは本質をつかみ切れていずに、自分の意見を正当化するための逃げなのか。本質に自信のある人はその部分から切り込めるのか。

「天は人の上に・・・」「天」とは何を指しているのか?神なのか、宇宙的な視点からの天なのか?

齋藤孝という人は、テレビのコメンテーターに出演したりしていてあまり好きではなかったが、「解説」がとてもよく、これだけ読んでも良いと思った。

【結論】
 学問は何のために行うかという、自問に対して私が出した結論は、学問とは「自分」と「社会」をつなぐ媒介である。この結論を得たのは、能楽師の安田登の本「あわいの力」(※が「あわい・あはひ(間)とは「媒介」意味を表す古語」を読んでいて「身体という「媒介」「あわい」を通して、人は外の世界とつながっている。」身体と言う「道具」の習熟が学問ではないかと考えました。

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by Eiji.K

◇ この書が書かれたのは明治5年~9年であり、江戸時代が終わり、近代国家に脱皮しようとしていた時代である。したがって、民主主義の意味するところ、国民としての権利と義務、政府と市民の立場、法律の厳守等現代の我々には当然の当たり前のことが試行錯誤の時代において分かりやすく、論理的に書かれていることに敬服する。

◇ 第9~10編のよりレベルの高い学問では「衣食住を得るだけでは蟻と同じ」 であり、後の世で我々の生きた証が恩恵として残るように努力しなければな らない、と言っていることは最もなことであるが、この時代は目標としての 西洋文明があり、戦後ではアメリカ文明という標本があったが、ある意味で それらを乗り越えた結果、現代の日本では資本主義がきしみ始め、民主主義も形骸化されており、学生は衣食住を得るために汲々としている時代になっている。そうした中では「日本人として外国人と競うことが学問の目的」ということは学生への指針とはなりにくくなっており、現代を諭吉が見たらなんと言うのだろうかと思う。

◇ 第13編「怨望は最大の悪徳」の中で”人生を活発に生きる気力は、物事に接していないと生まれにくい。自由に言わせ、自由に行動させて、財産も、社会的地位も、それぞれが自分で獲得できるようにして、まわりがそれを妨 害してはならないのだ。”といっており、言論の自由や束縛されない社会経済活動が必要であることを明治7年に示していることは驚きである。

◇ この本が書かれた時代の西洋文明に対する考え方が、全くの憧れだけでは なく、ヨーロッパ人の一般状況をよく見ていることが伝わってくるし、東洋の中国やインドの植民地化の情勢などの見方が的確なことがよくわかる。

◇ 一般的な啓蒙書、人生指針として当時からベストセラーとなっていたことは理解できるが、斎藤孝訳で最強必読のビジネス書として今後も読み継がれていくと言っていることは疑問ではある。(時代背景が異なりすぎていると思われる。)

◇ 本文中の†(記号)のまとめは非常に有効である。