2015年9月2日水曜日

「人間ぎらい人恋し」     時実新子


                                          2015年9月2日

by Eiji.K

◇ 女性が書いた随筆で楽しく、かつ面白く読めたのは高峰秀子の旅行記等の随筆以来である。

◇ 特に、ものの見方、とらえどころ、視点が男も含めた一般論でなく、女・女性の感性で見ているところが新鮮である。

◇ 全体のトーンに面白さ・愉快さが感じられるのは、川柳作家であるのでそのような表現ができるのか、川柳という世界がそのような思考方法にしてくれるのか、「鶏と卵」の関係なのだろうと思う。

◇ あけっぴろげな語り口、特に性について女性側からの記述は珍しく、年老いても艶かしさを感じる。

◇ 自分の子供たちに対する記述も、長男は中庸を目指し、長女は母親に反発するさまを的確に言っており、男親側ではそのようなことはむしろ言わないことが多いのが一般的であり、感心させられる。

◇ 良かったフレーズ・表現
 ・一生懸命はまわりの人も疲れさせる。
  →川柳の極意のような気がする。

 ・年中「病気ヤーイ」と探している人を私はたくさん知っている。
  “足腰を鍛え鍛えてガンになり”

 ・人は死ぬとき醜くなる。美しい女性ほどその落差ははげしい。
  “死ぬるとき見ている人を敵とせよ”

 ・親と子は声が似る。男性で自分の子かどうか認知に迷われる向きは、ややこしい血液型鑑定などよりも子どもが成人するのを待たれたらどうか。
  →当方も声が父親と間違われたことが何回もあった。

 ・女と女、そのかなしみは母娘といえども分かちあえないものなのだ。
  “子を生みしことは幻天高し”
  

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