2017年8月9日水曜日

「昭和二十年夏、子供たちが見た戦争」 梯久美子

平成29年8月9日(水)
by Eiji.K

◇ 現代の著名人10人が終戦時に子供であった頃の体験記であり読みやすかった。

◇ 終戦という世の中の価値観や生活形態、社会基盤等が180度変わる中で多感な思春期をどう生き抜いてきたかはその後のその人の人生に大きく影響してきたことはよくわかるが、ひるがえって自分の両親のことを考えると、両親は終戦時26歳であり、当然影響は大きくあったのだろうが、どうだったのかを聞く機会はなかったし、むしろ話したくなかったように思えるのはおそらく当時の日本人の共通思考であったのだろう。
  したがって、著名人の当時の生の声を引き出しているこの作者のインタビュー力量はすごいと思う。

◇ 当方は昭和22年生まれの戦後世代であるが、子供のころの祭りには傷痍軍人が必ずおり、当時のバラックの存在や闇市の独特の雰囲気や匂いを多少経験しているが、すぐに高度成長期に入り、それらの記憶は全くの過去のものとなっており、直接の影響はなかったといえる。

◇ 戦時中における一般市民や子ども達の記録をこのような読み物として後世に残していくことは意義あるものであると思う。

◇ 10人の内、印象に残ったこと。
 〇 児玉清
   疎開先でいじめに会い、その孤独と戦うために一人で演じることを習得し、その後の役者人生に結びついたこと。
 〇 館野泉
   クラシック界であまり馴染みのなかった北欧に行ったのは、戦後の「なにをやってもいいんだ」という空気が影響していたこと。
 〇 梁石日
梁石日の話が一番面白かった。「血と骨」の番外編である。終戦時の在日朝鮮人の逞しさと強靭さは、この作家の最も得意とするところであり、貴重な体験であったこと。
 〇 福原義春
   戦争で死ぬのは人間だけではない。文化もまた殺されることを実体験したこと。
 〇 山田洋次
   厳しさや惨さがむき出しになる闇屋の旅の中で笑うことがどんなに人を元気づけてくれるかを知り、寅さんの見本となる人に出会ったこと。
 〇 倉本聰
   岡山への疎開体験が、「北の国から」の廃屋改装のネタになっていたことを知ったこと。
 〇 五木寛之
   「青春の門」に出てくる炭鉱の荒くれ男たちのことは、朝鮮から福岡に引き上げた時代に経験していることであったこと。

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